星に一番近い島、星に届きそうなこの島は
産まれた時から私を見守っている

ブラックサンドの照り輝く漆黒は私に死を決意させた
海底火山のこの海は
珊瑚礁の海のように色彩が輝いているのではなく
闇の世界なのだ。

愛する事は私を深く切りつけ、また私を深く包む
人はどれくらい人を必要として、どれくらい人を愛する事が出来るのだろう
紡ぎだす言葉はもはや用意されず、私は声に、声にならない想いを抱いている。

波の激しさに抱かれながら私は沈んでいってしまう
意識はもはや消えかけて、海の中まで照り返す空の星を
海の底で私は見ていた
かすむ視界に人影が見えた


真夜中の海の中私を引き上げた彼の泣き声が聞こえた
「ダリアキミヲウシナッタラ、ボクハヒトリニナッテシマウ」
波に流されて生死を彷徨った私の体は青紫色に変化し、完全に冷え切っていた。
紫の唇に重ねられた赤い唇に生の温かさを感じた

私の体の中には彼にまだ話していなかった秘密があり、それを知らせないで、
私は海に消えようとした。
彼は私を狂う程に探し、ここへと辿り着いた。


海水を飲み込んだこの体の中には光が宿っていた。

彼にとっての海以上の存在には、私はなれないという悲しさに、
理性を失い私は腰までの髪の毛をナイフで切り落とし私は私を殺した。

もう戻るつもりもなかった
海に私は還るつもりだった
母のように暖かい羊水のような海に抱かれ
私はすべてに包まれたかった
自然回帰のようにそれは私の心を癒す

「la'akea!!!」
「 akua!!」

海岸に駆けつけたおばあさまが叫んだ。

「ナイトレインボウダ!ダリア、メヲサマシテ、ナイトレインボウダ!」

声が遠くで聞こえた
私は朦朧とした意識の中で目蓋を少し開けた
そこには涙を流す彼と
空一面の夜の虹が出ていた。

「カミサマハ、キミガイクコトヲ、ノゾンデイナイ」


おばあさまが私のお腹に手を当てて、すぐに納屋に連れて行きなさいと
厳しい口調で言った。


彼は私の中の秘密を知った。

私は彼に謝って欲しい訳ではなくて・・・

ただ一つ、愛して欲しかった
ただ一つ私だけを見つめて欲しかった
海に生きる彼をいつも止められない自分を責めていた。

私の中の秘密はまだ音をたて生きていた。

私は夢のような夜の虹を空っぽになった意識で見ていた。

ハワイに出る、奇跡の虹。
この虹を見た人には幸運が訪れると言われている。
見る準備が出来ている人にだけ、見る事が出来る、宇宙からのプレゼント
フラを踊る時にいつも空を描きながら夢見ていた景色だった

こんな私に神様はプレゼントをくれるの?
こんな私に?
海で私を抱きしめるかわりに、空で私を抱きしめてくれるの?

そして、あなたはこんな私を愛しているの?
泣き叫んで気が狂うくらい私を愛しているの?


私の意識は夜の虹とともに、そのまま星の中に吸い込まれて消えていった。

ただ覚えているのは目蓋に焼きついた輪廻の七つの色・・・。

真実はいったい何処にあるの・・・?